2016/01/24

雪ちゃん(2010)

雪ちゃん
 黒崎立体


ぼたん雪が落ちていくのを
部屋の窓からながめていた
集団自殺みたいに
ぼろぼろ、
ぼろぼろ、

こんな冷たい夜に
ようやく存在して
陽が射せば溶けてしまう
これがわたしの名前なのか
見せつけられて
水槽が凍る

ひとつ育つたびに
ひとつ温度を失くすような
生活だった
背中をまるめて
ぼろ雑巾のようにくたびれた
あなたが浮かぶ
ごめんね、
ころしたかったね、
いつまでも濁ったままの水槽を抱えて
電車に乗ったその夜は
水銀に似て
わたしの意識の鋳型を取った
(むりやりにつながれた星座を死ねますように
((死ねますように
(((死ねますように
ふるえるように
笑うと
むきだしの床にぼろぼろと
結晶が落ちる

見えますか
あなたがつけた名前の通りに
凍えて生まれた
六角形です
わたしはこうして
あなたが憎い

愛してほしいと
求めることが間違いだった
ひび割れていく水槽から
氷点下の鼓動が聞こえる



(『詩と思想』2012年1・2月号「2011ベストコレクション」掲載/電子詩集『dimensions』収録)